【045】穴二つ


席替えをしました。


席替えというと、学生にとっては勉強あるいは恋の明暗を分ける、簡易関ヶ原のようなものなのです。一ヶ月に一度のこの大イベント、僕の「席替え係」としての初仕事でもあるのが今回の席替えです。


「席替え係」に諸手をあげて立候補してるあたりに「ショボい モテない フラれそう」の理由が集約されているような気がしますが、この際そんなことは解ってても言うな。ともあれ席替えを司るのは僕です。どんなにモテなくたって、どんなに学生服をフォーマルにしか着こなせなくたって、オマエラは俺の作るくじに一喜一憂するしかないんだ。ふ、フハハハ!


そして、自分の席が明らかになっていく度に上がる歓声。憤りの声や悲哀の声、喜びの声や、微妙な溜め息。その全てが僕を包み、僕を満たしていく。嗚呼、なんて気分が良いんだ!クラス中のニンゲン共が、僕の掌で踊っているようだ、何だって?神? そう神だ、神だったんだ。「席替え係の三村です」と言ったときに嘲笑している貴様らが今、俺にひれ伏す、俺の判断に、俺の思うがままに! 神を見ろ!豚どもめ! ペッ!


フッ、さあ、その神の席は一体どこになったのかな?

 

「三村君、真ん中やね。 しかも前列」

 

 

 

まっ