【094】後


「社長! ついに画期的な商品が!」


「なんだ」


「これをみて下さい!」


「携帯電話じゃないか」


「そうです!しかし! スペックは従来のものを遙かに上回り、連続通話時間は最大六ヶ月!メモリは7500件まで記録!しかもですね!着メロは600和音フルオーケストラ対応、で、なおかつ留守電は二週間分保存可能!
さらに極めつけは!人工皮膚の開発により再現された人肌の感触とぬくもりと体臭!」


「この丸いのは何だね」


「あ、さすが社長!それはですね人工網膜をさらに精妙にした我が社のオリジナルでして、その名も人工眼球「瞳’98」!
見て下さい!アングルの調節は眼球運動で行い、チン小帯、虹彩によるスムーズなピント合わせや明暗調節も可能!さらに、さらには!飛行物体の衝突を未然に防ぐ「エクセレントまばたき」も追加!予期せぬ砂埃にも人工まつげが素早い対応を見せます!」


「なるほど、確かに機能は向上してるが、オリジナリティが無いと」


「あ、バッカだな社長!そこらへんを見過ごすはずがありませんよ!我々は選りすぐりのプロなんですから!
通話口をみて下さい!」


「なにやら小さい穴がたくさん出てるな、これがどうかしたのか?」


「軟膏が出ます!」


「なぜだ」


「ニュルっと出ます!」


「なぜ出るんだ」


「はいっ!そこは先程の人工眼球「瞳’98」と連動しておりまして!もし何かしらの怪我を負った場合に限り、そこから軟膏がニュルっと出る仕組みになっております!この機能の開発により、お子さまに携帯を安心して持たせられます!
人里離れた山中でまさかの遭難にもご安心下さい!その場合は軟膏と同時にブドウ糖がピュっと出るようになっております!これでゆっくりと救助を待つことが出来ますね!」


「電話して助けを呼べばいいじゃないか」


「出来ませんっ!」


「・・・・」



「出来ませんっ!」